コラム

2014-08-29

刑事事件と裁判員裁判

一定の重大事件について,裁判官と市民の方々が刑事裁判を行う「裁判員裁判」が導入されて早5年が経過しました。
最近は裁判員裁判を舞台にしたサスペンスドラマも作られるようになり,ある程度市民の方々にも広まったところではないかと思います。

とはいえ,一般の方にとって刑事裁判や裁判員裁判は身近なものではなく,イメージが持ちにくいのも確かです。
そこで今回は刑事裁判と裁判員裁判について,簡単にまとめてみたいと思います。

刑事事件というと,皆さんはどのようなイメージを持つでしょうか。
「警察24時」みたいなドキュメント番組を思い浮かべる方も多いと思います。
多くの場合,「犯罪発生!」となると警察が捜査を行い,被疑者(罪を犯したと疑われる人。犯人とは限りません)を発見して逮捕するところから始まります。
(身元がはっきりしている場合や交通事故などでは逮捕せずに捜査を進めることもあります)

逮捕されると,48時間以内に検察庁へ身柄と記録が送られ(よく「書類送検」と言われます),検察官による簡単な取調べ(弁解録取手続といいます)を経て,さらに24時間以内(逮捕から72時間以内)に,引き続き身柄拘束を必要とするかどうか(「勾留」といいます)についての裁判所の判断を受けることになります。
ここで勾留の必要性があると判断された場合,最長20日間,拘置所(または警察署)に勾留されます。その間に必要な捜査が行われることになります。


弁護士はこのように罪を犯したと疑われる人の権利擁護(防御権)のために専門家として助力するものであり,その地位は憲法にも明記されています。
刑事事件の弁護というと,「クロをシロにする」ようなイメージがありますが,実際は大きく異なります。
えん罪の疑いがあれば疑いを晴らすことはもちろんですが,大多数の「被疑者が罪を犯したことが間違いない事件」においても,例えば被害者への弁償の手続をしたり,家族や勤務先などにお願いして釈放後の環境を整えたり,あるいは被疑者とじっくりと話をして「今後事件を起こさないためにどうすればいいか」を一緒に考えることもあります。
英語では刑事弁護人を「ディフェンダー」と呼んでいますが,これが最も正確に刑事弁護人の仕事を表しているのではないでしょうか。
なお,一定の軽微な犯罪を除いて,勾留がされた時点で資力のない被疑者には国選弁護人が付されます。我々弁護士は多くの場合,この時点から刑事手続きに関与することになります。
ただ,前述のとおり勾留前にも捜査や事情聴取が行われており,この時点から弁護士が関わることが望ましいと思います。
この点については勾留前に国選弁護人を付すことができるように拡大すべきではないか,現在議論が進んでいます。

捜査の結果,検察官において裁判をする必要があると判断した場合は「起訴」という手続きが取られます。それ以外にも,あえて裁判を受ける必要がない,あるいは犯罪の嫌疑がない等の理由で処分されず釈放となる場合や,簡易な裁判手続きで罰金の処分にする略式起訴という手続もあります。
 どの手続を取るかの判断は,捜査側である検察官の判断に委ねられています(起訴弁護主義)。


 裁判になった場合,検察官が請求する証拠によって,被告人(罪を犯したと疑われて起訴されている人)が犯人であるとの証明がなされなければ有罪とできません(無罪推定の原則)。被疑者・被告人が罪を認めている場合でも同様です。
多くの場合,被疑者が逮捕された時点で犯人であるとのイメージを持ちますが,実際に犯人かどうかは判決までは分からない,ということになります。

裁判員裁判では,上述の「証拠により被告人を犯人と認めることができるか(有罪無罪の判断)」のほか,「被告人が犯人の場合,どのような刑を科すか(量刑)」の判断も行います。

裁判手続は裁判員裁判以外の場合,平均して起訴から2ヶ月程度で第1回公判が開かれ,事実関係に争いがない場合には即日結審して1~2週間後に判決が言い渡されます。
即日結審できない場合,2週間~1ヶ月程度の間隔をおいて審理を行い,証拠調べの手続を行うことが多いです。
これが裁判員裁判になると,裁判員の負担を考慮して,手続を連日(長期にわたる場合には間隔が開く場合もあります)行います。
審理期間は事実関係に争いがなく,証人が数名の場合は3~4日が多いですが,事実関係に争いがあり,多数の証人を調べる必要がある場合にはかなりの期間がかかることもあります。
いずれにせよ,手続を連日集中して進めるため,事前に検察側・弁護側の主張を整理し,証拠の採否を定めておく必要があります。
そのために「公判前整理手続」というものが行われます。
公判前整理手続,及び裁判員の選定のために裁判員裁判では起訴から公判まである程度の期間がかかります(争いのない事件で6ヶ月程度)。事件が起こってからしばらくして裁判となっているのはそのためです。

手続の中身は裁判員裁判もそれ以外の裁判も大きく変わりません。
ただし,裁判員裁判は法律の専門家ではない市民の方々が参加するため,裁判所はもちろん,検察側・弁護側ともわかりやすい主張・立証を心がけています。
反面,わかりやすさを追求すると不正確になってしまうので,わかりやすさと正確かつ説得力のある主張立証の両立が,常に課題になっていると思います。
ちなみに半田はこれまで裁判員裁判を6件担当していますが,いつも「わかりやすく充実した主張立証」をするための工夫で苦労しています。

以上は本当に概略であり,詳しく説明するときりがないのですが,少しは刑事事件の手続がどう進められているか,イメージは持てましたでしょうか。
もし興味があれば,実際の刑事裁判の傍聴に行ってみてください。実際に行われている「リアルな」裁判を傍聴すると,これまでニュースでしか知らなかった刑事手続きの世界がよく分かると思います。

(本コラムは事務所ホームページより転載しています。ホームページには他にもコラムを書いておりますので,よろしければお立ち寄り下さい)

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