コラム

2014-05-12

しみ抜きの依頼を受けて思う大切なこと

今日は着物を持ってある方にとっては大事なことを書きたいと思います。

まあ普段大事なことをお伝えしていないワケではありませんが・・・(^^ゞ


しみ抜きをする職人として依頼を受け付ける時にいつも思うことが2つあります。


まず1つ目は、

『せめて年に1回で良いので陰干ししてもらっていれば・・・』

ということです。

最近は着物離れで普段はあまり着物を着る機会は少なくなっていると思います。

一時期、和柄の服が若年層からチョイ悪オヤジの間で流行ったものの、着物を着るまでには至りませんでしたよね。

着物をお持ちでいつかは着られることがある以上、この陰干し(虫干し)は最低年1回はやって欲しいんです。

なぜ陰干しが大事かといいますと、着物はほとんどの物は絹でできていいます。

絹は乾燥した空気を喜びます。

この日本という国の気候は温暖湿潤気候といいます。

『湿潤』というくらいですから、1年間のうち乾燥した空気の期間というのは限られます。

代表的な季節として梅雨がありますよね。

そんな日本で生まれ育った着物ですから、昔の方の知恵で陰干しをしたり、湿気が来づらい桐のタンスや箱に保管したりしていたわけです。

じゃあ桐のタンスや箱に保管していれば万全かと言いますと、万全ではありません。

陰干しをせず湿気があるまま収納しっぱなしであれば当然カビは生えます。

カビが生えれば、早い段階であれば丸洗いや洗い張りで落とすことはできます。

しかし、年月が経つにつれ、そのカビが着物の生地自体を変色させてしまいます。

生地自体が変色するわけですから、生地の地色が抜けるまでしみ抜きしなくては取れません。

そして地色が抜けるわけですから、元の生地の色を復元するために地直し・色掛け修正もしなくてはなりません。

これには高い技術と手間と時間を要します。

それが無数にあれば、それは高い工賃を頂かざるを得なくなるわけです。

でも、年1回でも陰干しして頂ければ早期発見もできますし、カビの発生自体を極力抑えることができるのです。

コラムで私が口うるさく『陰干ししてください』と言っているのはこういう理由なんですね。


それから2つ目は・・・

シミを付けてしまった時、お客様が自分でなんとかしようとしみ抜きしたり、おしぼりで拭いてしまったりしてしまうことです。

当店の既存のお客様には『シミを付けたら絶対に触らないでくださいね!』とお伝えしていますので、ほとんどの方は大丈夫なのですが、新規のお客様の場合はたいてい何がしかこすったり触って拭いたりして持ち込まれます。

シミを何がしかしみ抜きしようとして触ってこられると、まずシミがこじれて抜けにくくなっている場合があります。

例えば脂・油系のシミをつけたのに水やお湯を使っていじってある場合。

これは水など水溶性の処理では落ちません。

しみ抜きの順番の鉄則として、まず脂・油系のシミを落として残留した水溶性のシミを取るのが正しい方法です。

先に水を使ってしまうとシミがこじれて取れにくくなったりするのです。

おまけに水やお湯を使ってしまったために着物の染の色が出て、無地の部分や裏地に色が移ってしまったりします。


また、着物は絹でできています。

この生地に水、特にお湯はいけませんが、温かいおしぼりなどで横にこすると『スレ』というものが起きてしまいます。

スレとは絹の生地を傷つけ、絹糸を断裂してしまいます。

そこでその拭いた部分は白く光って見えます。

これは濡れたおしぼりではなく、乾いたハンカチでも同じで、横にこするとこのような状態になります。

このスレは傷ですので直りません。

ある程度ごまかす『スレ直し』というお手入れはできますが、次回丸洗いや洗い張りをすればその加工は取れてしまいますし、着用時の自然な状態でもだんだん取れてしまいます。

たとえ染めなおしてもその部分への染料のノリが悪く、やはり白く光って見えます。

傷だから直らないのです。

『じゃあ乾いたハンカチで上から押さえて持ち込めば良いですか?』

という質問を受けます。

もちろんそれで良いです。

が、この押さえ方がキツい方が時々あります。

シミの濡れた部分が垂れないようにやさしくやんわりと水分を取るだけで十分です。

垂れる心配がないようであれば、そのままで持ち込まれていいんです。

とにかくシミを付けたら触らないでしみ抜きを依頼してください。


と・・・私が言いますと、

『仕事が欲しいから、素人でもできるけどしみ抜きを依頼して!と言っているのでは?』

と疑われる方もいらっしゃるかもしれません。


そんなことはありません。

あなたに着物を台無しにしてガッカリされて頂きたくないから私達のような職人の仕事が存在しているんです。

着物にシミをつけてしまったら、ぜひとも自分でなんとかしようとはしないでください。

逆に工賃が高くなり、さらには取れるシミも取れなくなり、生地を傷め、あなたの心も傷んでしまいますからね。

……………………………………………………………………
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きものお手入れ専門店 きもの処 大榮(だいえい)
代表者:末永 健
福岡県福岡市城南区樋井川1-23-22
TEL:092-864-7701
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きもの処 大榮(だいえい) [ホームページ]

伝統工芸 末永健

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